あの空は夏の中

私は孤独である限り、詩を書き続けるでしょう。
思い出も現実も、それほど変わりがない毎日は、
生きて行くにはあめりにもつかみどころがありません。
センチメンタルにもロマンチックのも、
どんなふうにもできるから、
人々は夢を、みたいようにみるのでしょう。
どうぞ幸福になってください。
私があなたを守ります。
―著者―

「理由もなく悲しい」

理由もなく悲しいとか、理由もなく楽しいとかいう言葉を
私はよくつかったけど
本当はいつもちゃんと理由があった

つめたくしてごめんね
つめたくすることしかできなかったの
あなたをとても好きで
あなたをずっと待っていたことが
とても悲しくて とてもくやしくて
うれしかったのにどうしょうもなく
つめたくしてしまったの

「片思いの守り方」

片思いは、かくしていた方がいい
だって今
私が彼のことを好きだと
みんなに言ってしまったら
私だけでなくみんなの心の中で
この恋が動き出してしまうもの

「本当のこと」

私があなたに言っていることは
みんな本当のことのようにも思えるし
みんな嘘のようにも思える

私にはわからない
あなたが決め手くれたらいい

「せいいっぱいつま先だちして」

せいいっぱいつま先だちして
あなたの頬にさわった
私はまだ子供だったけど
愛のこわさを知っていた

せいいっぱいつま先だちして
あなたの恋に溺れた
私はもう子供ではないけれど
愛のもろさを信じなかった

あの人は、私の考えていることを知りたい知りたいと言うけど
あの人は、私の考えていることを知ったら
きっとびっくりなさるわ
私がどんなに強くあの人を愛しているか知らされて
あの人はきっと、逃げだしてしまう

天使のように素直な気持ちになったあと
悪魔のような意地悪が心に浮かんだ
悪魔のような意地悪が心をとらえてはなさない
恋とはそういうもの

恋人同士の会話には
ムダなものはひとつもない

「言葉は心を伝えない」

言葉は心を伝えない。
言葉が心を伝えないことは
悲しいことではない。
言葉が心を伝えてしまったら
困ることがたくさんでてくる。
伝えられなかった心の中にこそ
最も大切な尊い何かがあるのではないか。
それがお互いを守るのでは、ないか。

自分以外のものを愛することは
結局、自分自身を知ることにほかならない
自分自身をしってもなお
他者の不在を痛感するのなら
その者こそが自分にとって必要な他者
自分の欠けた一部であろう

「あなたに会うまで」

あなたに会うまでは
夕焼けは美しく
花々はかぐわしく
朝露は清らかで
微笑みはやさしいものだった

今は
夕暮れは悲しく
やさしさは傲慢で
純潔は罪深いばかりだ

あなたは私をこんなに大人にしてしまった

あらっと不思議に思うことがある
この風に関しても
この人に関しても
どこまで知っていたといえるのだろう
心がたとえどんなに一致したとしても
結局はひとりなのだと

他の人といる時も
笑っていても
映画を見ても
心はいつも
あなたのことばかりでした

「空の向こう」

もしもこの空の向こうに夜の宇宙が広がっていて
静かにそして冷静に心というものをながめてくれるなら
私たちがとても小さく弱くて心細いものだと
見抜いてくれるでしょう

「恋の後ろ姿」

あの人にはもう一ヶ月会っていない
その前は二週間だった
こうやってだんだんと会わないことに慣れていく
今ではもう電話も
夜更けまで苦しく待ったりしない
時々 話すことがあるけど
落ちついて楽しく話すことができる
やさしくすることができる
これが恋の後ろ姿かしら

パラパラと突然、降ってきた時
ノートや本を閉じながら
あの人のことを考えた
雨から逃げるために本を閉じる
このあたりまえの動作のように
あの人が私を
思い出してくれたらいいのに
あの人がこの恋に
気づいてくれたらいいのに

聞こう聞こうと思っていることが
やっぱり顔を見ると聞けなくて
私は自分の不安をあやふやにごまかしながら
いい方にいい方に考えて
あなたの愛を過信してしまっている

たった一言でこわれてしまう
幻想の恋の中に
いるのだとしても
もう 仕方ない
私からはこわさずに
この恋をかかえて
あなたからも
逃げよう

そうだ、私は運命に負けない。
今は、どんなこと言われても、負けない。
だって、運命よりもあの人の方が大事だもの。

「いつまで探しまわればいいの」

あの人には あの人がいる
あの人には あの人がいる
みんな とても素敵だ

私は
いつまで探しまわればいいの

今すぐ聞かせてたい楽しい事
今すぐ教えたいすごい事
今 私もために無心になれる人

私は
いつまで探し回ればいいの

伝いたい気持ちがたくさんあります



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こちらのページはのれん本人が紹介しているものです。
銀色夏生さん、他各出版社様、ページの写真画像等とは
一切関係ありません。

あの空は夏の中
銀色夏生

初版発行 昭和63年9月25日
発行所   株式会社角川書店
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