詩集 ロマンス

元気ですか
大切なあの声を
聞いたでしょうか
私はいつも
耳をすましているのに
どうしてかいつも
悲しいことばかりです
けれど私にとって
それはいいことかも
しれません
だってだからこそ
こうしてみなさんに
会えるのだから
いつまでも
会っていたいです
見えない力に
抱きしめられて
前からも後ろからも
追いかけたりせずに
―著者―

「僕たち」

僕がいる
君がいない

君がいる
僕がいない

僕がいるところに君はいない
君がいるところに僕はいない

僕たちという忘れもの

「恋は勝手」

恋は勝手ね
束縛されたくないといいながら
自由でいたいと思っている

私は自由ね
あなたに 自分を守りすぎて
自分だけでいられるようになってしまった
あなたと一緒で「ひとつのもの」になればよかった

「愛されたいと」

愛されたいと思っていた時は
だれでもいいから
だれかに強く愛されたいと
思っていたのに

愛された今では
不必要な愛ほど
邪魔なものはなかった

「かなしいウソつき」

ものわかりのいい人ということになってしまって
今では
断続的に
かなしいウソつき

「お祈り」

こんなに
愛したままでいさせてくれて
ありがとう

ウソついてごめんね
でもウソつかないとこまったでしょう

ともすれば幸福そうにみえるかも
いいえ あなたがです

ここからぬけだしてどこかえ行こう
そう言ってくれる人を待ってる

「輝くような人」

輝くような人が道のまん中に立っている
私の行く手に 立ちふさがるように

輝くような人に気をとられて
歩みを忘れる

輝くような人を片手にかかえて進めないのであれば
輝くような人は手のとどかない遠くで光っていてもらいたい
そうでないと困るのだ

「決心」

いつも笑うと決めたなら
それでいいけどそのかわり
決して泣いちゃだめだ
いつも笑うと決めたなら
最後まで笑いぬけ
簡単にひるがえる決心なら
心を失っていくばかりだ

「沈黙がいちばん」

結局
言葉で説明することをよすのがいちばんだと思った
説明しようとすればするほど
ウソになっていく

ツーピースに白いバッグをもってちょこんと
ヒールのくつで後をついていこう

伝えたいことがあったら
泣こう

「もしも好きな人ができても」

もしも好きな人ができても
あんまり何にもあげないことにしよう
林檎がほしいと言ったら
へっ ととぼけた顔をしてぼんやり見つめよう
そうするとその人はあきらめて
自分でくふうするだろう

もしもその人が
空を見たいと言ったら
すみわたった青空を見たいと言ったら
えっ ととぼけた顔をしてその人をじいっと見つめよう
そうするとその人は考えて
言ってもムダだと思うだろう

何もかもあげすぎたばかりに
きらわれてしまったことのある私だったから

天の川 天使 恋人

みんな 見えにくい

涙をこらえよ
恋はただ一度だけど

涙をこらえよ
泣くことはただ一度だけと
心に決めるように生きよ

私たちに決断はあっても迷いはない
迷ったときは私たちは 
より私たち個人から遠い願いにもとづいて行動する
私たち個人から遠い願いとは
すべての人々にとって同じ距離にある本質のことである

あなたがステキだと思うことと
あなたがステキに見えることとは
ちがう

「悲しみは」

悲しみは涙の数より多く
この風は
愛をうたっているのね

一瞬という永遠の中で
瞳をかわす
私たち

もう一度
もう二度と

もう二度と
もう一度

ロマンスの道は遠かりき
我と我が身をはげまさん



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一切関係ありません。

詩集 ロマンス
銀色夏生

初版発行 平成元年5月25日
発行所   株式会社角川書店
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