宵待歩行
散歩道には光りの筋が落ちている。
どこまでも直進する明るい足跡。
浮かぶようにひとつ。
しずむようにふたつ。
ただようようにみっつ。
そしてまたどこまでも進むと、
咲きこぼれる静かな花々が自由気ままにあらわれる。
かわかない涙はどこへいくのだろう。
―著者―
「夜風の道」
もう忘れてしまったか
もう思いだしはしないだろうか
もうふりかえることはないか
もう君は
「別れたけれど」
別れたけれど
出会った痕跡さえ残せたろうか
あの人の心に
もう忘れてしまっているかも知れない
忙しい人だったもの
言いたいこと言い切れず
別れたけど
別れてよかったと思う
ずっと忘れないだろうけど
「決めたから」
私は変わったの
とても変わりたかったから
そうしたらいつのまにかかわっていたの
白い花を見て
名前を覚えた
友だちがへって
今は知りあいはすこししかいないけど
なぜだか前よりふえた気がしてる
昔からたくさん友だちがいると思っていたけど
そうじゃなかったのかも
好きな人がたくさんいただけだったのかも
それも もういいの
私はね 本当は だれのことも わからないの
ほどくゆううつそうな人をみると
胸が苦しくなるけれど
もう近づかないと決めたから
「お別れ小道」
今から思うと
あの会話が最後だった
あれがお別れ散歩道
表通りをすこしはいっただけで
見たこともない静かな道がつづいてた
そこをとぼとぼ
あてもなくきままに
あれこれいろんなことを話して歩いた
また来月ねと
笑って別れた
すっと仲よくなった気がした
あの時心がすごく近づいたのにな
あれが最後になるとは思わなかった
そうしているまにこの恋も
背の高さを超えてしまった
そうしているまにこの恋を
背の高さが越えてしまった
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こちらのページはのれん本人が紹介しているものです。
銀色夏生さん、他各出版社様、ページの写真画像等とは 一切関係ありません。
宵待歩行
銀色夏生
初版発行 平成3年10月30日
発行所 株式会社角川書店
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