ONLY PLACE WE CAN CRY

秋は美しい口笛でした
窓から何かが降ってくるような
だから黙って見つめたのです

おぼろげながら わかっていたことが
今 目の前で はっきりしました

追いかけているものは何だろう
追いかけて おいつくものは何だろう

あなたの恋人になれないのなら
せめてあなたに あなたになりたい

むこうみずで
たかぶる思いで
ケンカみたいなものもした

生まれてなじめて
心をみせた人だった
ああ こんなふうになるのかと
自分自身がせつなくて

あの人を失いたくなければ
意地をはるのをやめなければ

いつまでも どこまでも
進んでいったらどうなるだろう

君が今 話したことは
君が今 話しおえたことから
いちばん遠い所にある

恋する気持ちが みせる夢は
百日のまぼろし
天気雨の虹

それもあって

まちがえようのない
石だとか
あいまいでないものに
私はなりたい
すこしでいいから

つめたいつめたいと思っていた
あの人は
今になって思えば
それほどつめたくはなかったような

素敵だ素敵だと思っていた
あの人は
今にして思えば
それほど素敵ではなかったような


∞あとがき∞

トンネルを進んでいるような日々ですが、
このトンネルは好きなので、
ずっとずっと本を作って、
最後までトンネルの中だとしても、
このまま深くコツコツと進んでいきたいです。
ひとり用のせまいトンネルだけど、
目的の方向がわかっているから、
日々たゆまなく、今、こうしている時も、
すすんでいるような気がしています。
このトンネルは暗くないです。
ちゃんと日が射すし、
風も吹いて、
友だちもいて、
愛する人もいます。
テレビも旅行もマンガもよめるトンネルなので、
ほりつづけます。
これが私の仕事だと思うのです。

―銀色夏生―



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こちらのページはのれん本人が紹介しているものです。
銀色夏生さん、他各出版社様、ページの写真画像等とは
一切関係ありません。

ONLY PLACE WE CAN CRY
銀色夏生

1991年1月25日 初版発行
株式会社角川書店  発行所
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