月夜にひろった氷

ポケットの中で 星が騒ぐので

どうしても それが騒ぐので

この恋は

あきらめようと 思った

「神様なんてどこにでもいる」

神様なんてどこにでもいる
みんな同じひどい顔して
みんなとてもいじめっ子なんだ

だから君は悲しんでも仕方ないよ
いじめられてるだけなんだから
僕なんてずっとだよ
ずいぶん長くだよ
だから慣れちゃったけどさ

君はあんまり知らなかったから
びっくりしただけさ
君は いい子だから

僕が
僕にできることなら
なんだってやってやるから

神様なんてへんてこなヤツだよ
君は
神様よりも“絶対”だ
そう思うぜ

「ガラスのため息」

折りたたんでビンにつめた
願いのつまったガラス
恋人は遠い空の下
夕暮れを気にしてる

ライトがついて
青くなって
うすぐらくなって
すずしくなれば

私だっていつも
ガラスのため息

さよならなんて

いつでも言えた

「少年の無情な流れ」

涙が胸に揺れていた
あなただから
何もかも許されるべきだと思ってる
今にもこわれてしまいそうだと
あなたは自分の精神をおそれているが
ただそれだけでなく
見えないのは未来

未来さえなければ
愛してると言えるのに

「それが涙だと言うのなら」

それが涙だと言うのなら
なぜ君はそれを大事にする
それが悲しみだと言うのなら
なぜ両手を離してしまわないんだ

かたくかたくにぎりしめて
ずっとずっと守っているのは
それが必要だからだろう

君は後ろをふり返り
君はまわりをみわたして
ある考えにぴったりくると
知っていたものと油断する
油断してまた歩き始める

君は涙をおまじないのように持っていて
幸福のゆくえを
決めさせる
それが涙だというのなら

「閑静な思いつき」

この恋がなんだというのだろう
この恋はもう私だけのものではない
むしろ私の領分を離れ
運命と共に歩いている
そのカツタツな足どりに
何の助言が必要だろう

この恋に私は心の中で
あきれたり感心したりしながら
この恋を私は見つめるだけだ
他人のように

「二人の今」

二人の過去に甘えているあなたは
今の瞬間は
何にもささえられていない
ということがわからない
過去も未来も
それぞれの今なんだ
今日のやさしさは真実だけど
昨日のやさしさとは別のものだ

思い出に甘えてはいけない
あなたを嫌うこともできるんだ

「あこがれ」

笑いかけてくれたからうれしかった
あこがれと呼んでもさしつかえなければ
それをゆるしてくれるなら
らくになれる

「九月のドライブ」

あなたのような人になりたいと思っていた

あなたのような人に泣かされると思っていた

「秋の海でのこと」

これからは
この音だけに
耳を傾けて
生きていくと言った


∞あとがき∞

確かに彼等は素敵だけど

それは追いかけるべきものではない
想う人への想いが消えて
君と僕へ 帰ってゆく時が
その時の気分が
僕に自分をたしかめさせるんだ

君の花の中で
小さな現実をつっついて遊んでいれば
時にはその穴からハトがとびだしてくるよ

驚いた君の顔ったら ないね

僕は 生きて ゆけるね

―銀色夏生―



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一切関係ありません。

月夜にひろった氷
銀色夏生

1987年12月10日 初版発行
株式会社河出書房新社
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